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G8リソース・ブック『サバイバル・キット 国際保健とG8』

はじめに

: なぜG8に取り組むのか〜G8諸国の市民として〜

第2部

: G8は保健に関してどんな約束をしてきたのか

おわりに

: G8に関する市民のInstitutional Memory をつくるために

資料編

第1部:G8北海道・洞爺湖サミットの国際保健上の成果

3.洞爺湖サミットの成果をどのように活用していくか

  1. 洞爺湖サミットによって得られた「機会」の活用
  2. 洞爺湖サミットで達成できなかった課題の追求
  3. G8市民社会の連携強化の必要性

1洞爺湖サミットによって得られた「機会」の活用

洞爺湖サミットで得られた最大の成果は、フォローアップ・メカニズムである。「G8の過去の誓約に関するアカウンタビリティを確保する」とG8自身がうたっている以上、市民社会はこのフォローアップ・メカニズムを最大限活用し、実際にG8が既存の国際保健関係の誓約を忠実に履行するようにアドボカシーを実施しなければならない。これを行ううえで重要なのは以下のことである。

a) ベースラインとなる「附表」に関する評価

G8は、今回のサミットで発表した「附表」を毎年改訂し、G8の各誓約に関して、各国が実際にどの程度の拠出をし、どのような貢献をしたかについて評価する、と述べている。つまり、この「附表」がベースラインとなるわけである。
そうである以上、ベースラインである「附表」の形式・内容について精査し、誤っている箇所、不十分な箇所を指摘し、G8の誓約履行状況と各国のパフォーマンスが具体的にわかるような附表となるように提言していくことが重要である。

b) 各国のパフォーマンスに関する独立した評価

G8政府が作る「附表」は各国の妥協の産物であり、市民社会がいくら提言しても、不十分な箇所が残ることは当然である。市民社会は、これに対して、政府の発表する情報を活用しながら、各国の資金拠出および実施のパフォーマンスを独自にモニタリング・評価し、各国が実際に、G8が行った誓約をどの程度履行しているかを明るみに出していくことが必要である。

現在の「附表」は、国際保健全体および三大感染症対策への拠出について、大枠での数字が記載されているのみであり、G8の国際保健に関する各種の誓約に具体的に対応した形となっていない。実施内容についても、各国が実施したことがただリスト化されているのみで、それがどの程度の効果を挙げ、誓約の達成に貢献したかについての記述がない。また、拠出資金についても、単位通貨が統一されておらず、比較ができないなど、ユーザー・フレンドリーでない点が多々存在する。これらの点について、市民社会が改訂を求め、また、独立した評価で実際に指摘するなどして、G8が真にアカウンタビリティを果たすように働きかけていくことが必要である。

2洞爺湖サミットで達成できなかった課題の追求

2010年は、ミレニアム開発目標達成の上での一つの節目であり、また、「HIV/AIDS治療・ケア・予防の普遍的アクセス」目標およびマラリア・アブジャ目標の期限でもある。本年の洞爺湖サミットは、実際にこれらの目標を実現するために必要な多くのことを達成できなかった。その中で、とくにHIV/AIDS 分野で達成を要求していかなければならない課題として以下のものがある。

a) 普遍的アクセス実現に向けた資金拠出計画の策定

2010年までに普遍的アクセスを実現するには、2009年に300億ドル、2010年に400億ドルの拠出が必要であるとされている(UNAIDS)。
(ウェブ:http://data.unaids.org/pub/Report/2007/20070925_advocacy_grne2_en.pdf
今回のサミットでG8が拠出を誓約したのは、「感染症」と「保健強化」に5年間で600億ドルを拠出するというもので、HIV/AIDSに関する普遍的アクセス実現にも遠く及ぶものではない。
イタリアでのG8サミットに向けて、普遍的アクセスを実現するための資金拠出計画の策定を要求していく必要がある。

b) ハイリゲンダム・サミットにおける各種目標の実現のための資金拠出計画の策定

また、G8は2007年にハイリゲンダムで、HIV/AIDSに関して以下の誓約を行っている。これらは、普遍的アクセスを達成する上でG8が行わなければならない責務のレベルを大幅に下回るものではあるが、これらを実現するための具体的な資金拠出・実施計画を策定させる必要がある。
(ハイリゲンダムG8サミット "Growth and Responsibility of Africa":
http://www.g-8.de/Content/DE/Artikel/G8Gipfel/Anlage/Abschlusserkl_C3_A4rungen/WV-afrika-en,templateId=raw,property=publicationFile.pdf/WV-afrika-en

3G8市民社会の連携強化の必要性

G8サミットに向けた国際保健の政策形成プロセスに対しては、G8各国の市民社会が、より効率的な情報共有と連携の仕組みを構築し、各課題に対して臨機応変に対処する必要がある。その理由は以下の通りである。

今回のG8サミットでは、2月以降、「G8保健専門家会合」が3回開催され、「洞爺湖国際保健行動指針」がまとめられた。このプロセスの中で、様々な課題について、G8各国政府の利害が対立し、結果として、「行動指針」に記載された多くの事項が、各国の妥協により、十分な内容が含まれないものとなってしまった。例えば、以下の課題に対して、以下のような各国の利害対立が存在した。

  1. ハイリゲンダム600億ドルの拠出の期限について:
    英国政府は積極的に「3年間」(2010年まで)を主張したが、ドイツ政府は「8年間」を主張。他の大陸ヨーロッパ諸国やカナダも消極的であった。
  2. リプロダクティブ・ヘルス、妊産婦の健康改善について:
    日本政府はこれを盛り込むことに積極的であったが、米国政府は一定の理解を示しながらも、リプロダクティブ・ヘルスに消極的な自国の伝統的立場に固執した。
  3. HIV陽性者の渡航制限について:
    フランスは渡航制限の緩和・廃止を訴え、日本もこれに同情的であったが、米国とロシアはこれに対して強く反対した。
  4. 「洞爺湖行動指針」の文書の性格について:
    日本はこれについて、G8首脳宣言に近い高いレベルの性格を付与するよう働きかけたが、イタリアおよびカナダは、この文書G8首脳に提出する単なる提言文書のレベルにとどめようとした。

このように、G8諸国の立場は各課題によって異なるため、全ての課題において妥協が必要となり、より高いレベルでのコミットメントが実現できなくなる。これに対して、G8諸国の市民社会が、早期の段階で情報を収集し、「抵抗勢力」となる国に対して連携してアドボカシーやキャンペーンを行うことができれば、G8諸国も低いレベルでの妥協はできなくなり、より積極的なコミットメントを含んだ決定を行うことができるようになる。よって、G8諸国の市民社会が共同して効率的な情報収集・連携・アドボカシーを行えるしくみ作りが必要である。
市民サミットの閉幕式(2008年7月8日)
市民サミットの閉幕式(2008年7月8日)

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